ふくめん総合研究所

平成最後のクリスマスイブに設立された、お察しの総合研究所

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同人誌市場とアダルトビデオ市場の逆転から考える、コンテンツづくりの未来

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アダルトビデオ(AV)と同人誌。
皆さんはそれぞれ、どんなイメージをお持ちでしょうか?

AVと言えば、大きな声では言えないけれど男性なら誰でも見たことがある(現在進行形で見ている)もの。

一方、同人誌と言えば、一部のマニアのもの。

そんなイメージが強いのではないでしょうか。

 

しかし、それぞれの市場規模を比較してみると、なんと同人誌市場がAV市場を上回っているのです。2008年頃に逆転して以降、現在もその差を広げ続けています。

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この現象は、何を示すのでしょうか?

 

 

サマリ

① AV業界衰退の陰に、作品のデジタル化と競争の激化
② 求められる多品種少量生産対応
③ そのニーズに合致した同人誌の供給構造
④ あらゆる業界が歩む、個人供給化とビジネスチャンスとは

 

 

 

アダルトビデオ市場の衰退要因

まずはAV市場が衰退している要因を見ていきましょう。

矢野経済研究所の「『オタク市場』に関する調査結果」によると、AV市場は2017年時点で495億円。2006年の661億円から、おおよそ年平均で2-3%で減少してきています。

その要因は以下の通りです。

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直接的な要因と、その結果

AV業界衰退の直接的な要因は

 1.日本ビデオ倫理協会(通称:ビデ倫)の弱体化(解散)

 2.コンテンツのデジタル化

にあると言われています。

AV表現の規制団体であったビデ倫の弱体化(解散)は、良くも悪くも作品作りの競争を激化。AVがより過激でマニアックな方向へ進むきっかけとなりました。

一方、コンテンツのデジタル化は、違法コピーを可能に。一度コピーが出回った作品は収益が見込みづらくなくなることから、メーカーは多品種生産によるリスク回避に舵を切らざるを得なくなりました。

それらの結果として生じたのが、1作品あたりの販売可能本数の減少。つまり、細分化した市場に小さく作品を投入せざるを得ない状況です。

 

業界が取った対策と、その限界

 これを受け、AV業界には2つの方向からの対応が求められました。

 1つは、ターゲットが狭くなった分、一作品あたりの売上を安定化させること

 2つめは、ターゲットの狭さに応じて、制作コストを削減することです

売上の安定化のための策のひとつが、確実なマニア需要の獲得。作品にファンを付ける戦略です。ここ数年で見られるようになった、何十文字にも及ぶ長文タイトルなどは、この策の一つと考えられます。

売上の安定化のためのひとつの策が、セクシー女優のアイドル化。女優にファンを付ける戦略です。セクシー女優のYouTuber兼業などは、わかりやすい方法です。例えば、人気セクシー女優の紗倉まなは、20万人近いチャンネル登録者数を持つ人気YouTuberにもなっています。

 

一方で、いまのAV業界がどうしても対応できないのが、制作コストの削減です。

競争の激化により、業界はSOD・DMM・プレステージなど一部のプレイヤーに集約。結果として組織は大きくなり、削減できないコストを抱えることになっています。

 

 

同人誌業界のカウンターパンチ

ここにカウンターパンチのように入り込んだのが、同人誌業界です。(もちろん、同人誌は18禁作品がすべてではありません)

同人誌の仕組みは、AV業界が求めていた「マニア需要」「主演の人気」「低コスト」のすべてを完璧に満たすものでした。

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まずはマニア需要。

これに関しては、作り手の徹底したこだわり(作品の深さ)と、総作品数(作品の幅)が決め手になります。これに対し同人誌では、作者の好みで作品を作れること、そして作者の数だけ作品数があることが、圧倒的な強みとなっています。

次に、主演の人気。

AV業界ではセクシー女優をアイドルとして育成する手法が取られていますが、どうしてもお金と時間が必要になります。それに対し同人誌では、すでに人気のあるキャラクターを主人公として起用することが多く、これも間違いのない強みとなります。

最後に、コスト。

組織化されたAV業界では、コントロールできるコストの幅が限られ、1作品当たりのターゲットの狭さに対して損益分岐点が上がってしまう構造となっていました。それに対し同人誌では、基本的に個人が利益度外視で制作。少なくとも事業性という面においては、継続性が確保されている状態となっています。

 

AV業界の課題と対策、そして弱み。それに対する、同人誌の強み。

それがぶつかり合った結果、冒頭の通り、同人誌市場がAV市場を上回る今の状況が生まれてきたのではないでしょうか。

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アダルトビデオ業界が進む道

ではこのような状況の中で、AV業界にはどのような道が残されているのでしょうか。

いまのAV業界で、同人誌のようなカウンターパンチを打てるのは「個人撮影」という方法です。

スタート時こそ主演者の人気は望めないものの、作品の深さと幅、そしてコストについては大手では敵いようがありません。またYouTuberがそうであったように、文化が根付けば、動画制作者や出演者から人気者が輩出されてくることでしょう。

課題は、それを実現できる「配信プラットフォーム」が現時点で存在しないことです。求められる要件は、「アダルト配信が可能なのこと」と「投稿者の収益化が可能なこと」。もしこのようなプラットフォームが誕生すれば、AV業界の勢力図は大きく変わることでしょう。

 

 

思い返すと、現在のAV業界の主流であるセルビデオ方式が確立されたのは、1990年頃。まさに平成の世のアダルト業界は、セルビデオ方式とともに歩んできました。

2019年。平成の時代が終わるとき、アダルトビデオの世界もまた、新しい一歩を踏み出すのかもしれません。

 

 

 

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最後までお読みいただきありがとうございました。

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それではまた次の記事でお会いしましょう!